親と教師におすすめの本『学力の経済学』

      2016/11/12

学力向上に向けた勉強

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『学力の経済学』という本をご紹介します。読後の感想を一言でお伝えするならば、この本、とにかく面白い!子どもを持つ親なら誰もが気になる「ゲームは子どもに悪影響?」「教育にはいつ投資すべき?」「ご褒美で釣るのっていけない?」などの疑問に対し、データに基づく明確な答えを示す本です。Amazonのランキング1位となった実績も頷けますね。特に子供がいる人や学校の教師は、絶対に読んでおくべきでしょう。

書籍概要

この本の目的は、「過去に世界中の教育経済学者が明らかにしてきた、『知っておかないともったいないこと』を読者に紹介すること」です。よくテレビなどで、教育評論家や子育て専門家と呼ばれる人たちが教育について語っていますが、実はその意見は個人の主観や経験によるものでしかないことが往々にしてあります。

それらの意見は一見、もっともらしく聞こえます。しかし、実際のデータを用いて分析した結果とは相反していることが多々あるのです。この本は、そんな事実に気付かせてくれると共に、様々な実験で得られた「本当に効果のある教育」を教えてくれます。それでは、内容を簡単にご紹介していきましょう。

内容紹介

この本は、以下の5つの章で構成されます。

  • 第1章 他人の〝成功体験〞はわが子にも活かせるのか - データは個人の経験に勝る
  • 第2章 子どもを〝ご褒美〞で釣ってはいけないのか? - 科学的根拠に基づく子育て
  • 第3章 〝勉強〞は本当にそんなに大切なのか? - 人生の成功に重要な非認知能力
  • 第4章 〝少人数学級〞には効果があるのか? - エビデンスなき日本の教育政策
  • 第5章 〝いい先生〞とはどんな先生なのか? - 日本の教育に欠けている教員の「質」という概念

ざっくり言うと、1〜3章は子供を持つ親向けの内容です。どうすれば子供の成績が効率よく上がるのか?いつ教育に投資すればより良い人生になるのか?などなど、いくら個人で考えても、正解がわからない問題は山ほどあります。しかし主観を排除した多くの実験から導かれる答えは、ある意味正解の1つであり、誰もが興味深いと感じるのではないでしょうか。

4章以降は、どちらかと言えば教育を生業にしている人向けの内容です。学校におけるクラス編成などの教育方針が、学力に与える影響を具体的なデータで紹介しています。教育方法に悩む教師には、ぜひ知っておいて欲しい情報ですね。ただし、先生以外でも、誰もが歩んできた日本の学校教育の問題点がわかりやすく記されているため、教師に限らず終始退屈しない内容になっています。

具体例

それでは、この本で語られている具体的なお話をご紹介します。たくさんありすぎて迷ったのですが、長くなりすぎないよう、ここではギュッと絞って2つだけ。ポイントだけのご紹介ですので、詳しい理由などが知りたい方は書籍をご覧ください。

ご褒美は「インプット」に対して与えるべき

世の中の親御さんがよくやっている「ご褒美で釣る」という方法は、何に対してご褒美をあげるかによって学力向上効果が大きく変わるというものです。よく聞く「テストで良い点を取ったらご褒美をあげる」のは、いわゆる「アウトプット」に対するご褒美ですが、実はこれは効果が薄いことがわかっています。

それに対し、「一冊本を読んだらご褒美をあげる」「宿題をしたらご褒美をあげる」などの「インプット」に対するご褒美は、より学力の向上に結びつきやすいという実験結果が出ています。アウトプットよりインプットへのご褒美の方が効果が高いという事実は不思議に感じますが、ポイントは「子供が何をすべきかが明確になっているか否か」とのことです。

「やればできる」は意味がない

子供は褒めて伸ばす方が良いとよく言われます。しかし、これも褒め方によって学力への影響が大きく異なるという結果が出ています。例えば「やればできる」という褒め方は、逆に学力低下を招いてしまうというデータが出ています。安易に出してしまいそうな言葉ですので、注意しないといけません。

効果が高いのは、上記のように子供の「能力」を褒めるのではなく「努力」を褒めることだそうです。能力を褒められて「自分はできるんだ」と思い込むと、極端に言えば実力の伴わないナルシストになってしまいます。一方、「よく頑張ったね」と努力を褒められると、次回も頑張ろうという意欲に繋がるのです。

所感まとめ

では最後に、全体的な所感を。僕自身この本を読んで、目からうろこな内容ばかりで驚きを隠せませんでした。そして、心から「今読んでおいて良かった」と思いました。僕のように小さな子供がいる人や、小中高の先生方には、教育方針を定める上で非常に参考になる内容がふんだんに織り込まれているため、ぜひとも読んでいただきたい一冊です。

また、「学力だけが人生ではない」と思う方も多くいると思いますが、その点についてもしっかり書籍内で語られています。また、教育の結果は個々の環境にも左右されるため、この本の通りにやれば完璧な教育ができるかというと、そうではないでしょう。「完全に鵜呑みにせず、子供一人ひとりの特性や環境を考えた教育を行うことも当然ながら必要です。

それでも、この本に書かれている科学的根拠に基づいた様々な事実や考察は、間違いなく一読の価値があるように感じました。テレビなどで語られる根拠のない意見に惑わされないためにも、僕はこの『学力の経済学』を早いうちに読んでおくことをおすすめします。

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